BCP作成手順
事業継続計画の作成
BCPの作成手順について事例と共に学んでいきます。
地域や企業ごとにBCP の内容は異なりますが、ある程度の流れとポイントを捉え、事例にしたがって作成していけば自然と良いたたき台がつくれます。実践しながら定期的にブラッシュアップさせていくことで、自社にあったBCPの作成ができます。
国から認定を受けるためには、国が定めたある一定水準以上のBCP を策定しなければなりません。
ここでは、中小企業強靭化法に基づく計画作成に向けて考えていきます。イノベーションマトリックスでつくった骨子を基に、記載例を参考にしながら、自社について文章を作成していきましょう。
自社の事業活動の概要
自社の紹介文です。業種等を記載するとともに、自らの事業活動が担う役割(サプライチェーンで重要な部品を卸している、地域の経済・雇用を支えている等)を軽く記載します。
事例に沿って作成してみましょう。表をダウンロードして書き込んでください。
◆記載例
当社は、主に大手家電メーカーA社に○○部品を供給しており、当該部品供給の過半のシェアを有するなど、サプライチェーン上の重要な役割を担っている。このため、感染症拡大等の影響による消費の減退により、当社の生産活動が縮小、もしくは事業が停止するとサプライチェーンや地域の雇用に大きな影響が生ずる。
事業継続計画に取り組む目的
自社の理念等と照らし合わせて、BCPの目的について考えます。
主に、次の点がポイントです。
① 従業員やその家族に対する責務
② 自社の企業理念や経営方針
③ 顧客、取引先や地域経済に対する影響
④ 事業継続力強化に当たっての理念や基本的な方針
事例に沿って作成してみましょう。表をダウンロードして書き込んでください。
◆記載例
下記3点を目的に、事業継続計画に取り組む。
1. 自然災害発生時において、人命を最優先として、社員と社員の家族の安全と生活を守る。
2. 地域社会の安全に貢献する。
3. 部品の供給の継続、又は早期の再開により、お客様への影響を極力少なくする。
≪感染症対策の場合≫
下記2点を目的に、事業継続計画に取り組む。
1. 感染症の発生時には、従業員等関係者とその家族の生命の安全及び雇用の確保を最優先する。
2. 感染症が流行した場合であっても、感染拡大防止に全力を尽くし、生産活動を継続し、仕入れ先への影響を極力小さくすること、また取引先への供給責任等を果たす。
事業活動に影響を与える自然災害等の想定
BCPを策定する上での自然災害を想定します。ハザードマップやJ-SHIS(地震ハザードステーション)等を確認し、自社の事業活動に甚大な影響を与える可能性が高い自然災害を一つ以上記載します。(複数の拠点を持つ場合、個々の拠点ごとの詳細な被害想定までは不要です。)
*地震については、予想震度や津波の予想高さ、水害については浸水の予想高さ等を具体的に記載してください。
*間接被害(主要な取引先が○○災害が想定される地域に所在しているなど)による影響が想定される場合は、そのような影響を記載してください。
●ハザードマップの入手方法
●感染症について
感染症の状況については、いつでも、どこでも発生する可能性があり、感染の状況も日々変化します。こうしたことから、日頃から最新かつ、正確な情報を入手することにより、地域の感染状況等を把握しておくことが大切です。例えば、厚生労働省のホームページでは、都道府県別の新型コロナウイルス感染者の発生状況を毎日更新しています。加えて、自治体等のHP等にも公表されている都道府県等もありますので、併せてご確認ください。
感染症のリスクの大きな特徴は、人と人の接触自体がリスクになることです。このため、感染症拡大局面においては、人の移動が制限されることにより、事業活動に大きな制約が生じる場合があることに注意が必要です。
例えば、感染症の拡大により、以下のような影響が懸念されます。
①従業員自身や家族の発症に伴う就労の困難
②学校の閉鎖や介護サービスの停止等により従業員等の出社が困難
③消費者行動の変化や行政からの外出自粛要請など景況の変化による事業活動への大きな影響
④取引先等においてクラスターが生じ、一時取引停止となるおそれ
事例に沿って作成してみましょう。表をダウンロードして書き込んでください。
◆記載例
当社の事業拠点における事業活動に影響を与える主な自然災害は、所在地の自治体が発行するハザードマップで確認した。
○○県○○町:震度6以上の地震が想定される、浸水想定地域 1m以上浸水。
○○県○○市:震度5強以上の地震が想定される。
○○県○○市:特に大規模地震や水害の想定がない地域である。
(感染症の記載例)
当社の事業拠点は、○○県○○市にあり、現状の感染症の感染状況等を踏まえると、(再度)感染症の影響が拡大し、感染者が全国各地で発生した場合、事業の継続に支障をきたす可能性がある。
当社は、主に大手電機メーカーA 社に○○部品を供給しており、当該部品供給の過半のシェアを有するなど、サプライチェーン上の重要な役割を担っている。このため、感染症拡大等の影響による消費の減退により、当社の生産活動が縮小、もしくは事業が停止するとサプライ チェーンや地域の雇用に大きな影響が生ずる。
自然災害等の発生が事業活動に与える影響
最も大きな被害が想定される自然災害、感染症を対象として事業活動に与える影響を、①人員、②建物・設備、③資金繰り、④情報、⑤その他に分けて想定します。自社だけでなく、取引先の被害やインフラなどの影響も検討する必要があります。
事例に沿って作成してみましょう。表をダウンロードして書き込んでください。
●人員に関する影響
◆記載例
想定する自然災害等のうち、事業活動に与える影響が最も大きいものは震度6弱の地震であり、その被害想定は下記の通り。
〇自然災害
営業時間中に被災した場合、設備の落下、避難中の転倒などにより、けが人が発生する。また、公共交通機関が停止すれば、従業員が帰宅困難者となるほか、夜間に発災した場合、翌営業日の従業員の参集が困難となる。併せて、従業員の家族へも被害が生ずる。これら被害が事業活動に与える影響として、復旧作業の遅れや、事業再開時において、特定の従業員が専属で担当していた部分について業務再開が困難となること、生産量が減少することなどが想定される。
〇感染症
・国内で感染症の発生が確認された場合には、移動の制限や行政からの外出自粛要請等により店舗等における必要な人員が確保できなくなることが想定される。
・国内で感染が拡大し、本人又は家族が感染した場合には、長期間出勤できなくなる従業員が複数発生することが想定される。これら被害が事業活動に与える影響として、従業員が専属で担当していた顧客に関する情報や業務の引き継ぎが滞り、加えて営業等の停止を検討せざるを得なくなり、顧客に迷惑をかけることなどが想定される。
●建物・設備に関する影響
◆記載例
〇水害
・大雨により事務所及び工場が浸水し、事務所のパソコン等の電子設備や、工場の生産設備等が浸水することが想定される。これら被害の事業活動に与える影響として生産ラインの一部又は全部の停止が想定される。
〇感染症
・国内で感染症の発生が確認された場合には、マスクや消毒液等の衛生用品が入手しづらくなることにより、従業員の感染防止対策を講じることができなくなる。
・国内で感染が拡大し、従業員が感染した場合には、飛沫や接触により、コピー機や端末、文房具等の共有物や、水回り等に病原体が付着すること、感染拡大の防止のための設備・備品(空気清浄機、防護服等)のコストが想定され、生産活動の縮小もしくは、営業活動を一時的に停止すること等が想定される。
●資金繰りに関する影響
◆記載例
〇水害
・事業活動の停止により収入が得られないことで、運転資金が逼迫する恐れがある。また、浸水により一部設備の修理や新規設備購入が必要となることが想定される。
〇感染症
・国内で感染症の発生が確認された場合には、感染拡大防止の目的から従業員の出勤率を下げることにより生産ラインの稼働率の低下が想定される。加えて、感染拡大防止のための設備・備品等の調達コストが発生し、収益を圧迫することが想定される。
・国内で感染症が拡大し行政から外出自粛要請等が出された場合には、製品の需要(消費)等が落ち込むことが想定され、外出自粛が長期化すれば、運転資金が逼迫し、その間、資金調達ができなければ、運転資金が枯渇することも想定される。これら被害が事業活動に与える影響として、売上が急減する一方、固定費等の支出が増加し、資金繰りが悪化することが想定される。
●情報に関する影響
◆記載例
〇水害
・事務所内のサーバ(顧客情報、財務諸表等を保管)の浸水により、バックアップデータ以外は喪失し、取引先からの売掛金の回収が困難になる等の影響が想定される。
〇感染症
・国内で感染症の発生が確認された場合には、感染拡大防止の目的から従業員の出勤率を下げることにより生産ラインの稼働率の低下が想定される。加えて、感染拡大防止のための設備・備品等の調達コストが発生し、収益を圧迫することが想定される。
・国内で感染が拡大し、従業員が感染した場合には、決算関係の財務情報等など、重要な情報を扱う従業員が通勤できなくなることが想定される。
●その他影響
◆記載例
〇水害
〇水害及び感染症における影響
・取引先の被災や公共交通機関の影響、また、感染症流行期における人や物資の移動制限の影響により、1 週間程度、原料である鋼材の調達が困難になれば、最終製品の出荷が不可能になることが想定される。これら被害が事業活動に与える影響として、取引先と約定通りの製品納入を行えないなどの事態が想定される。
実施期間・事業継続計画を実施するために必要な資金の額及び調達方法
●実施期間
・3年以内の取組であること
・開始時期は本申請書の申請日以降の年月にすること
事例に沿って作成してみましょう。表をダウンロードして書き込んでください。
◆記載例
4.実施期間
2021年 9月 ~ 2024年 8月
●事業継続計画を実施するために必要な資金の額及び調達方法
「損害保険への加入」等を「資金調達方法」に記載する場合は、「金額」の欄には加入に対して必要な保険料ではなく、事業の継続に必要な金額(=自社に支払われる保険金の金額)を記載する。
事例に沿って作成してみましょう。表をダウンロードして書き込んでください。
◆記載例
実施事項 |
使用・用途 |
資金調達方法 |
金額(千円) |
---|---|---|---|
事前対策 |
設備の復旧費用の支払い |
当該設備にかかる損害保険等 |
50,000 |
事前対策 |
従業員への給与の支払い |
C 銀行からの融資 |
5,000 |
事前対策 |
自家発電設備、免震装置、排水 |
自己資金 |
3,700 |